Book Review

久々の沢木耕太郎のエッセイ。

書評と映画評、それに日韓W杯・長野五輪観戦記がセットになった本。相変わらずスポーツ関連の文章が旨い。

心に残ったエッセイは「僕たちには「心で泣いて」プレイすることはもうできない」というタイトルの日韓W杯の韓-伊戦の安貞桓に関する文章。

イタリア戦の序盤でPKを外した安貞桓は、試合中「心の中で泣きながらプレーをしていた」らしい。結果、韓国は終盤で追いつき、安貞桓がV-Goalを決め、韓国は勝つ。これを踏まえて沢木は言う。日本がW杯の決勝トーナメントで勝ち進むには、試合中ずっと一つのミスを「心の中で泣きながら」プレーし続ける、ある種の「熱さ」を持った選手が必要だと。

この一説を読んで思い出したのが、今年のW杯における中田英寿。今回の彼は「心の中で泣く」ような「熱さ」を持っていた。でも、決勝トーナメントにすら進めなかった。孤軍奮闘といった状況だ。日本のサッカーが強くなるには、精神面での「熱さ」が必要なのかも。

4年前に書かれた文章なのだが、あまりにもタイムリーな内容だった。

シネマと書店とスタジアム (新潮文庫)

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