多面性

推理小説を読むときの楽しさは、事件を解決する側の視線と、犯人からの視線との違いにあると思う。つまり、同じものを見ていても感じることや、受け取り方が違うってこと。


人それぞれ、物事の捉え方が違うってことは、当たり前といえば当たり前。極論すれば、真実というものは存在しない、同様に真実はいくつもある、と言い切っていいと思う。まあ、日中の歴史認識の問題にしても、かみ合わないのは当たり前なんだけど。なんか最近、歴史認識問題に関わらず、世の中に「真実はひとつ」的な風潮が強くて、辟易する。多様な考え方、異端な考え方を切り捨てるようなところ。


とまあ、話がそれてしまったが、そういう観点で言うと「藪の中」(芥川龍之介)はおもろい。野盗に暴行を受けた妻と、妻が暴行された夫の立場の両方の立場から、同じ暴行事件について描いている。ここまで違うのか、て思うほど2人の捉え方が異なっていて、おもしろい。「火宅の人」(檀一雄)と「檀」(沢木耕太郎)の違いもおもしろい。妻に浮気がばれて自虐の念にとらわれつつも、浮気を続ける檀一雄の自伝的小説と、檀の妻が夫との思い出を語った、沢木のノンフィクション。


「冷静と情熱の間」江國香里ver.は読んだけど、辻仁成ver.はまだ読んでない。2つの間に、違いがみれて面白いんかな?